心理学の資格や検定はどう役立つ?心理資格の具体的な詳細と種類一覧
心理学という、私たちの心の中を分析する学問は、個々の内側にあって捉えることが難しい心に器を与え、さまざまな形での表現を可能にします。
簡単に言うと、心というぼんやりとしたものをもっと分かりやすくしようという事です。
学問は、個人が他人に知られずこっそりと学んでも、誰かに教えてもらっても、また複数で議論を交わしても、どれも同じく学問としての価値を持ちます。それは、心理学においてもいえます。ただ、心理学を他人に向かって語り、その学問的な手法を取り入れて活動するなら、それなりの信頼性が求められます。そして信頼性を形にするのが、資格や検定です。
ここでは、現在の社会で認められている一般的な心理学に関する資格や検定についてご紹介します。
◆心理学の資格や検定、なんのためにあるのか?
心理学を学んでいる人が、その知識や能力を客観的に測り、それを提示できる形にするためにあるといえます。
実は、心理やメンタルに関連する資格の多くが民間の資格です。もちろん、大学かそれ以上の教育機関での学習が必要な資格や国家資格もありますが、心理やメンタルの関連資格として代表的な名称である「カウンセラー」は、自称でさえ通用します。
このような事情のもと、社会には非常に多くの心理学関連のカウンセラーが生まれていますが、カウンセリングを受ける側、または心理学を教えてもらう側が、カウンセラーや教師を選ぶ際の基準があやふやになりがちです。また同時に、カウンセリングを行い、心理学を教える側の立場も不安定になってしまいます。
心理学は、人の心の中という非常にセンシティブな部分を扱う分野だけあり、ちょっと話を聞いてほしいという雑談レベルから法的に守秘義務が必要となる治療レベルまで、幅も奥も広く深く、そこには必要に応じた能力の有無を判断する基準が必要となります。
そんな中で、心理学の資格や検定は、一定の信用性のある心理学関連団体からの「お墨付き」にあたり、社会の中で、心理学を挟んだ両側の立場が安心して向かい合える環境作りを担っていると考えていいでしょう。
◆心理学の資格や検定、何に使えるのか?
自分自身の心の安定というメンタルヘルス、家族や友人との関係ケアなど、身近なところで個人的に活用されることも少なくありません。心理学を学び、資格や検定を受けることで、実際の人間関係に応用していくわけです。
また、教育関連分野などでは、就職時の資格という優位に働く材料として扱われることがあります。さらに、職場での人間関係対策やスキルアップとしても活用が可能です。
より専門性の高い資格を取得、検定や試験をパスすれば、心理学のプロフェッショナルとして、保育・教育・医療・看護・介護などの分野で活躍することもできます。
◆心理学の資格や検定、誰が受けるのか?
心理学の資格や検定は、心理学の習熟度や利用方法などによって受けられる人が限られてきます。
受験者の絞り込みは、受験者側に選択肢がある場合もあれば、資格や検定の受験資格として設定されているものもあります。どちらの場合も、それぞれの能力を証明し、その能力にふさわしい使い方を示してくれます。
心理学の資格−民間団体の発行資格
民間団体が独自に設定している資格や検定の多くは受験資格が緩く、ほぼ誰もが受験可能ですが、履歴書に記載して就職に有利になるほどの効力は持ちません。ただ、自分なりに心理学を学んだという証しとしての意味合いはあるでしょう。
また、中には団体内で開講している講座などを受講することが受験資格となっている場合もあります。心理学関連のコースを受講すれば資格を得られるものや、コース終了後に検定を受けて一定の能力を認める資格を得られるというものもあります。
心理学の資格−日本学術会議からの指定を受けた資格
数多いこれらの資格や検定の中では、日本学術会議から「日本学術会議強力研究団体」として指定を受けている学会認定の団体によって交付されているかどうかも、社会的な効力に大きな影響を与えます。そのため、認定団体の関連する資格や検定はそれ以外のものと比較すると難易度や専門性が上がり、受験資格の入り口の門戸は広くとも、出口は誰もが取得できるとはいえない狭き門となっています。
心理学の資格−受験資格に制限のある公的資格
さらには、受験資格が非常に厳しく制限されている資格もあります。数例あげると、臨床心理士は、専門職大学院などの臨床心理士指定大学院の養成課程を経た、臨床心理学系修士号の取得者や医師免許取得者に受験資格が制限されています。また、ガイダンスカウンセラーも、大学院修士課程で心理学系修士号を取得し、関連業務に3年以上の経験を持ち、教員免状を有するという3条件を満たす者しか試験を受けることができません。
資格や検定には大きな幅があることがお分かりいただけると思います。どの資格や検定を誰が受けるのかというと、先に述べたように各自の学習習熟度とその資格や検定の利用目的次第といえます。自分の知識量を測るだけであれば、受験資格の縛りのない比較的手軽なものを、心理学を自分の能力として社会に示したいならば、大学院修士課程で心理学系修士号を取得した者にだけに許される難易度の高いものを受けていくことになります。
◆心理学の資格や検定、どんなものがあるのか?
民間、認定団体、公的資格などなど、さまざまな団体が扱う非常に数多くの資格や検定が選択肢としてあります。公的な資格が最も受験資格が厳しく、社会的な効力も高いのは言うまでもありませんが、誰もが受けられる民間の資格や検定にも、社会的に認められているものが少なくありません。
ここでは、ある程度名の知られている心理学関連の資格や検定を、その認定元別に簡易的に分けて一覧でご紹介します。
学会や民間法人・団体による民間資格として
●各種認定カウンセラー
(メンタル心理カウンセラー・メンタルケアカウンセラー・プロフェッショナル心理カウンセラー・EAPメンタルヘルスカウンセラー・上級心理カウンセラー・産業カウンセラー・スクールカウンセラーなど)
●NLPプラクティショナー
●メンタルケア心理士・メンタルケア心理専門士
●メンタルヘルス・マネジメント検定
●精神保健福祉士
●社会福祉士
●応用心理士
●音楽療法士
●家族相談士・家族心理士
●健康心理士
●行動療法士・専門行動療法士
●催眠技能士
●臨床催眠資格
●心理療法士(心理セラピスト)
●特別支援教育士
国家資格として
●公認心理師
高等教育機関の資格として
●臨床心理士
●学校心理士
●臨床発達心理士
●ガイダンスカウンセラー
●認定心理士
任用資格名として
●心理判定員と児童心理司
検定として
●心理学検定・メンタルヘルス・マネジメント検定(公的資格)
◆心理学の資格や検定、どうやって受けるのか?
心理学の資格や検定の受け方としては、一発試験タイプとコース受講タイプがあります。
一発試験タイプは、独学者のための資格といってもいいでしょう。ネット、参考書などを使用して自分で勉強し、その勉強の成果としての資格取得や検定合格を目指します。一例として、心理学検定は比較的新しい検定制度ですが、日本心理学諸学会連合の認定を取得しているため、徐々に知名度も信用性も高くなってきている検定の一つです。しかし、受験資格の縛りがありません。大学で心理学を学んでいる人も受けることがありますし、まったくの独学で受ける人も多くいます。
一般的に「心理カウンセラー」と呼ばれる人たちの持つ資格はさまざまですが、そのほとんどは、専門学校、通信講座などでの2~6か月程度という短期間の学習で資格を取得することができます。「心理カウンセラー」の中には、初級レベルから上級レベルまでが含まれているのです。身近な初級レベルだと、「メンタル心理カウンセラー」は2か月程度、「メンタルケア心理士」は4か月程度での取得が可能です。上級レベルの「心理カウンセラー上級資格」などは12カ月以上を要するといわれ、その難易度の違いが分かります。ただ、どのレベルであっても、指定のコースを受講して、それぞれの授業内容をクリアしていくことで(落第しなければ)、特別な試験を受験することなく資格を得ることができるものが大半です。
独学でコツコツ学ぶか、通信教育を利用するか、学校や講座に通って学ぶかは、学ぶ本人の時間や経済的な余裕のほか、向き不向き、そしてもっとも重要な、どの程度のレベルの資格や検定を狙っているのかによって変わってくるでしょう。
◆心理学の資格や検定、社会的地位や収入は?
大学や大学院で心理学を学んで心理学系の修士号を取得した人にだけ許される資格、公認心理師や臨床心理士、ガイダンスカウンセラーなどは、その資格だけで病院や大手企業などに就職が可能になるほどの社会的な効力を持ちます。当然、これらの資格保持者たちの社会的な地位は高く、収入も安定している場合が多いでしょう。
ただ、手軽に得られる心理カウンセラーという資格であっても、心理学的なアプローチで人の心を助けている人は大勢います。独学でごく初歩的なカウンセラー資格を取得したのをきっかけに、その心理学知識をベースとしつつブログや書籍などをツールとし、独自の求心力によって人々の心をつかみ、成功して社会的地位や収入も得る人もいます。
一部の非常に社会的に高いステイタスを持つ資格以外では、その資格や検定を持っているだけでは、地位の向上や収入の底上げには必ずしも直結しないのが現実です。同じ民間のコース受講でも、1年以上かかる上級レベルの資格を取得したからといって、それがすぐに社会的地位や収入の増加に結びつくとは限らないのです。では、心理学の資格や検定はどうすれば社会的地位や収入にプラスに働かせることができるのでしょうか? 結局は、資格の名前よりも、本人の知識量と人間性に大きく左右されるようです。
心理学という学問の場合、数カ月から1年程度のコース受講で学び取れる知識量は決して十分とはいえません。そのため、資格取得後のさらなる学習や知識の吸収、そしてそれをいかに活用していくかという工夫が非常に大切です。さらには、先に述べた人間性も大切な要素です。心理学を扱う場では、人の心に内側に触れる必要があります。信用に値すると相手が認識してくれなければ、カウンセリングは成り立たないのです。同じ言葉をかけられても、それが心に響くか聞き流されるか、はたまた胡散くさく取られてしまうかは、心理学を扱う側の人間性にかかっている部分が非常に大きいのです。
心理学の資格や検定によって、社会的な地位や収入を高めるには、知識量や経験とともに自身の人間性をも磨く必要があるというわけです。
◆まとめ
心理学の奥の深さが、資格や検定の種類の異常なほどの多さから伝わってくるのではないでしょうか。また同時に、いかに現代社会で心理学というアプローチが必要とされているかも実感できます。
現代社会は、ハード面での満足度は上昇しているといわれます。だからこそ、その裏側にあるソフト面、心の満足度がより重要視されるようになってきているのでしょう。
心理学は一見、難しいとっつきにくい学問に思えるかもしれません。でも実は、あらゆる人にとって非常に身近な存在であり、実生活で応用が可能な知識でもあります。
社会における心理学的知識の必要性が高まるにつれ、非常に多くの資格や検定が乱立している昨今ですが、今後は需要に応じてそれらが絞り込まれていくと予想されます。結果として、心理学がより信用でき頼れる存在になり、私たちの心と私たちの社会の安定につながっていくことが期待されます。
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