フレーミング効果とは|情報の見せ方が印象を変える心理学
フレーミング効果の使い方について、結論から言うと『行動を促すときはポジティブに、行動を止めさせるときはネガティブに情報を伝える』ということです。
フレーミング効果とは
フレーミング効果とは、情報の提示方法によって、同じ事実でも受け手の解釈が変わる現象です。
グラスに半分の水が入っている時、
「まだ半分も残っている」と表現するか、「もう半分しか残っていない」と表現するか。
牛肉の説明をする時、
「このステーキ、赤身が75%でヘルシーなんですよ」と表現するか、「このステーキ、脂肪が25%もあるんですよ」と表現するか。
このようにポジティブな表現は希望を、ネガティブな表現は警戒心を誘います。
ここでは、人々がそれらの表現にどのように影響を受けるのか理解し、目的に応じて使い分けできるようになっていきましょう。
2種類のフレーミング効果によって変わる心理的印象
フレーミング効果には、ポジティブなフレーミング(メリットの提示)とネガティブなフレーミング(デメリットの提示)があり、同じ意味を持つ情報でも異なる反応を引き出します。
「75%の成功率」「25%の失敗率」という表現を例にそれぞれの効果と効果的な使用方法を見ていきましょう。
1. ポジティブな情報は行動を促す
「75%の成功率」→「じゃあやろう」という心理変化は、ポジティブなフレーミングの例です。
このようにメリットを強調することで、人々はその選択肢に対してより好意的な心理を抱きやすくなります。
ここで影響している印象効果が次の3つです。
- ポジティブな感情の促進: ポジティブなフレーミングは受け手に希望や幸福感を与え、行動に対してより好意的になる。
- 自己効力感の向上: ポジティブなメッセージは、自分自身で望ましい結果を達成できるという自己効力感を高めることができる。
- 社会的規範との一致: ポジティブなフレーミングは、しばしば社会的に望ましい行動を促すものであり、その規範に従いたいという欲求を刺激する。
このようにポジティブなメッセージは人々に希望や動機づけを与え、自己効力感を高めることができるため、積極的に行動させたい場合や、望ましい行動変容を促したい時には、ポジティブな説得戦略が一般的に効果的であると考えられます。
継続的なポジティブな行動変化を促すためには、人々が自らの選択に対して前向きな心理を持つことが重要です。
2. ネガティブな情報は行動を止めさせる
「25%の失敗率」→「ならやらない」という心理変化はネガティブなフレーミングの例です。
このようにリスクやデメリットを強調することで、受け手のリスク回避の傾向が強まり、否定的な心理を引き出しやすくなります。
ここで影響している印象効果が次の4つです。
- 損失回避の原理: 人々は損失を避けるために、得ることよりも失うことにより強い動機付けを感じるため、ネガティブなフレーミングによる損失の可能性は、人々の行動を変える強力な動機となり得る。
- リスク回避の動機づけ: ネガティブな情報は、リスクや潜在的な不利益に対する人々の自然な回避反応を刺激する。
- 防衛機制の活性化: ネガティブなフレーミングは、避けたい結果に対する防衛機制を活性化させることで、望ましくない行動や状況から遠ざかるよう動機づける効果がある。
- 緊急性の感覚の創出: ネガティブなメッセージは、状況の緊急性を強調し、即時の行動を促すことがあり、「今すぐにでも対処すべき」という心理は、特に健康や安全に関わる問題において、行動変容を促すのに効果的。
このようにリスクや損失の可能性を強調することで、その行動への関与を避けたいという自然な心理を利用できます。反発的・拒否的な行動を促したい場合や、特定の行動から人々を遠ざけさせたい時には、ネガティブな説得が効果を発揮することがあります。
しかし、過度にネガティブなフレーミングは逆効果を招くこともあり、受け手が情報を無視したり、反発したりする可能性もあるため、慎重な使用が求められます。
フレーミング効果の事例
フレーミング効果は、健康、金融、政治など、さまざまな分野での意思決定に影響を及ぼします。
例えば、健康診断の受診率を高めるためには、「受診しないことで発見が遅れるリスク」よりも、「定期的な受診による健康維持の利点」を強調する方が効果的です。
これは、行動の実行を促す目的であり、なおかつ継続的な行動変化を必要としているからです。
日常生活での応用例
例えば、子どもに野菜をもっと食べさせたい場合、「健康になるため」というポジティブなフレーミングを用いると、より効果的にその行動を促すことができます。
逆に健康のために喫煙をやめさせるためには、「喫煙による健康被害」などのネガティブなフレーミングを強調し、「浮いたお金を貯金して家族旅行に行こう」と継続的な行動変化に持っていくなどが効果的です。
メディアによるフレーミング効果での印象操作例
1. 福島第一原子力発電所事故 (2011年)
この事故に関する報道では、メディアによって危険性の程度や事故後の対応が異なってフレームされました。一部の報道では、原子力の安全性への疑問と事故の深刻さを強調し、原子力発電に対する否定的な感情を喚起した一方で、他のメディアでは政府や東京電力の対応を中心に報じ、情報の透明性や安全対策への信頼を促すアプローチが取られました。
2. 尖閣諸島問題
尖閣諸島を巡る日中間の領土問題において、日本国内のメディアはこの問題をどのように報じるかによって、国民の中国に対する感情や政府の外交政策に対する支持度に影響を与えました。一部のメディアは日本の領土権を強調し、中国の挑発行為に対する批判的な視点を提示しましたが、他のメディアではより穏やかな対話を求める声や、双方の主張を公平に報じるアプローチを取った例もあります。
3. 安全保障関連法案 (2015年)
2015年に成立した安全保障関連法案についての報道は、メディアによって大きく異なるフレーミングが見られました。一部のメディアは、この法案が日本の防衛能力を高め、国際社会での責任を果たすための必要な措置であると報じ、ポジティブな視点を提示しました。一方で、他のメディアは、平和憲法の理念からの逸脱や、戦争への道を開くものとして法案を批判的に報じ、反対運動を強調しました。
4. 2020年東京オリンピック
COVID-19パンデミックの中で開催された2020年東京オリンピックに関する報道では、イベントの安全性、経済的影響、そして精神的な意義など、様々な角度からのフレーミングが見られました。オリンピックを前向きに捉え、結束と回復の象徴として報じるメディアもあれば、パンデミック下での大規模イベントのリスクを強調し、批判的な視点を提示するメディアもありました。
5. 消費税率の引き上げ
消費税率の引き上げに関する報道も、そのフレーミングによって受け手の反応が異なりました。経済財政の安定化や社会保障の充実を目的とする政策としてポジティブに報じるメディアがある一方で、生活費の増加や中小企業への影響を強調し、消費税増税に批判的な立場を取る報道も見られました。
これらの事例は、メディアが情報をどのようにフレーミングし、それがどのように公衆の認識や感情に影響を及ぼす可能性があるかを示しています。メディアリテラシーの観点から、さまざまな情報源からの情報を批判的に評価し、多角的な視点を持つことが重要です。
フレーミング効果の心理学まとめ
ポジティブな説得とネガティブな説得を比較すると、ネガティブ(恐怖や不安を煽る)説得の方が強い影響力持っています。
しかし、途中で述べたように過度にネガティブなフレーミングは受け手が情報を無視したり、反発したりする可能性もあるということを頭に置いておきましょう。
また、自分が表現しているポジティブやネガティブが、相手にも同じような感覚で伝わっているのかにも注意してください。
フレーミング効果は、私たちの意思決定に大きな影響を与える強力な心理学的現象です。
この心理効果を理解することで、私たちは自分自身の意思決定プロセスをよりよく理解し、他人に影響を与える方法についても学ぶことができます。
情報をどのように提示するかによって、受け手の選択や行動が大きく変わることを理解し、フレーミングを意識的に用いることで、より良いコミュニケーションと効果的な行動変化を促していきましょう。
結論:行動を促すときはポジティブに、行動を止めさせるときはネガティブに情報を伝えましょう。
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