心理カウンセラーとは?就職までの流れとその働き・人の見極め方

カウンセリング, 心理学

心の病、精神的な不安定さ、人間関係の悩み。日常的な生活の中で人が抱えるさまざまなトラブルを、心の動きから捉えて助けていくのが心理カウンセラーの役割です。

ただし、心理カウンセラーと呼ばれていても、その個々の実際の正式名称も異なれば、活動範囲や能力にもかなりの差があるといっていいでしょう。

ここでは、一般的に心理カウンセラーと呼ばれる職種の種類と役割、それぞれの活動範囲、そして、心理カウンセラーになるためにはどうすればいいのか、また、自分に合う心理カウンセラーと出会う方法などについてまとめました。

◆心理カウンセラーとは何をする人なのか?

カウンセラーという言葉に対して持つイメージには個人差があります。話し相手や相談相手と考える人もいれば、より専門的な治療を施してくれる相手として期待する人もいます。

ただ、カウンセラーという名称には法律的な括りもなければ、定めもありません。資格も経験もない状態でも、カウンセラーと自称することが可能なのです。

自称できるのは心理カウンセラーも同じ。だからこそ、きちんとした資格や検定の有無が、心理カウンセラーとして信用や活動内容に大きく影響を与えます。

心理カウンセラーは人の心にアプローチすることで、人が抱えるトラブル解決の手助けをし、日常生活をよりスムーズに過ごせるように導きます。友人や家族間の会話という自力カウンセリングで解決できない問題を、第三者である心理カウンセラーが専門知識を持って介入することで解決に導くのです。

想像していただくとお分かりいただけると思いますが、カウンセリングが必要な内容というのは、多くの場合非常にプライベートでありセンシティブです。誰にも相談できず解決できないからこそ、心理カウンセラーを頼ります。そこには、大きな信頼関係が求められるのも当然でしょう。

その信頼のもっとも基礎部分となるのが、資格の有無であり、資格の内容や社会的認知度なのです。

心理カウンセラーは、カウンセリングを求める人の信頼を受けて心のトラブルを共有し、解決のための手助けをするという役割を担っています。

相手の心に寄り添う心理カウンセラー

◆心理カウンセラーの分類

心理カウンセラーは、いくつかのカテゴリーに分けられます。

① 自称タイプ。特に資格や検定は取得しておらず、独学で心理学を学んで実践している心理カウンセラーたちです。

② 民間の講座や資格試験、検定を経て、心理関連のカウンセラーとしての資格を得てはいるものの、その専門知識と経験が少ない心理カウンセラーもいます。

これらの心理カウンセラー資格は、心理学を学んだことがない初心者でも数カ月程度で取得が可能という難易度の低さや手軽さから人気がありますが、心理カウンセラーとしての社会的な認知度や信用度は十分とはいえません。

③ 2つ目と同じく民間の資格や検定ですが、難易度が高く、プロの心理カウンセラーを目指す人たちです。資格取得までに年数がかかり、受講内容も幅広く深いところまで扱います。そのため、実力がともなう資格として認められ、就職などにも有利に働く可能性が高くなります。

④ 2015年に公布された「公認心理師法」に則った国家資格「公認心理師」を含めた、大学・大学院以上のレベルが求められる資格を持つ心理カウンセラーです。取得者には、すでに心理学系の修士号を取得している、教員資格がある、医師資格があるといった人が多く、社会的地位も認知度も高いのが特徴です。

◆心理カウンセラーの種類

では、実際にどんな種類の心理カウンセラーが存在しているのか、上記の①から④の具体例をあげてみましょう。

心理カウンセラー−①自称タイプ

自称タイプの中には、独学で心理学を学んだ後、ネット・書籍・テレビなどで心理カウンセラーとして活動している人がいます。彼らの活動内容は、独学の心理学にある程度裏打ちされてはいるものの、占いや人生相談のような感覚もあります。心理学という学問よりも、心理カウンセラー本人の話力などの個性や魅力によって、クライアントと大衆を惹きつけている傾向が強いでしょう。

心理カウンセラー−②民間資格等を有するタイプ

比較的手軽な民間資格としては、「メンタル心理カウンセラー」「メンタルケアカウンセラー」「メンタルケア心理士」などが知られています。資格としては2か月程度からという最短ルートでの取得が可能で、心理カウンセラーとして活動する目的以外に、自身やその周囲といった限定範囲内での人間関係に応用するなど、日常生活の中で役立てる意味合いが濃くなります。

「メンタル心理カウンセラー」は、指定のカリキュラムを修了後、在宅試験で随時受験が可能です。上級資格にあたる「上級心理カウンセラー」受験前に取得する人が多いようです。

「メンタルケアカウンセラー」は、指定講座を受講し修了すれば取得できる資格であり、もっとも手軽といえるでしょう。「メンタルケア心理士」の場合には試験があり、指定講座を受講修了しているか、心理学系の大学を卒業しているなどの受験資格がありますが、こちらも4カ月程度の学習期間で取得が可能です。

心理カウンセラー−③高度な民間資格等を有するタイプ

民間資格ではあっても、難易度の高いものとしては、「メンタルヘルスマネジメント検定」「産業カウンセラー」「EAPメンタルヘルスカウンセラー」「NLPプラクティショナー」などがあげられます。

メンタルヘルスマネジメント検定

「メンタルヘルスマネジメント検定」は、大阪商工会議所が主催しているため、半公的資格として知られています。Ⅰ種からⅢ種まであり、Ⅲ種は合格率が約72%、Ⅱ種は約68%ですが、難易度の上がるⅠ種は13%を切っています。受験資格はないため、Ⅰ種Ⅱ種は手軽といえますが、実質的に社会的な効力を持つⅠ種を取得するのはかなり難しく、それだけに資格取得者の認知度は高くなります。

産業カウンセラー

「産業カウンセラー」は、一時公的資格としても認められていましたが、現在は指定講座を修了すれば受験資格が不要となる民間資格として人気があります。産業の名がつく通り、主に経営や労務など企業内での心理カウンセリングを担うカウンセラー養成を目的とした資格です。学科試験と実技試験があり、付け刃の知識では合格できない難しさです。

内容的には心理学系大学院卒業者と同等のレベルの学習習熟度が求められる資格。7カ月程度の講座をこなすことで受験できるのは、ある意味手軽といえますが、その分短期間に集中して学ぶ必要があります。

EAPメンタルヘルスカウンセラー

「EAPメンタルヘルスカウンセラー」も企業などで従業員対象としたメンタルヘルスケアプログラムを推進するためのカウンセラー資格です。民間資格ですが、メンタルヘルスマネジメント検定のⅠ種かⅡ種合格、医師・臨床心理士・キャリアコンサルティング技能士などの国家資格取得者、産業カウンセラーなどとして実務経験2年以上、企業内産業保健実務経験5年以上などの中に満たす要件を持った上で、指定カリキュラムを修了し、資格試験に合格して初めてEAPメンタルヘルスカウンセラーを名乗ることができます。難易度はかなり高いといえるでしょう。

NLPプラクティショナー

「NLPプラクティショナー」は、心理学では最先端をいくアメリカからもたらされた手法で、日本でも注目されるようになりました。NLPとは神経言語プログラミングの略語で、心理学と言語学とを組み合わせて体系化した、コミュニケーションに特化した新しい学問です。認定コースを受講すれば、無試験で資格が取得できますが、他の資格に比較して高額です。ただ、アプローチの易しさと日常生活への応用のしやすさから人気があります。上級資格としてマスターコースの設置があり、こちらに関してはかなりの難易度となります。

心理カウンセラー−④国家資格等、大学・大学院以上タイプ

国家資格である「公認心理師」をはじめとし、準国家資格としてみなされることも多い「臨床心理士」「臨床発達心理士」「学校心理士」「ガイダンスカウンセラー」などがあります。

公認心理師

「公認心理師」は2015年に公布、2017年施行の新しい制度である公認心理師法により定められた心理カウンセラー職の国家資格です。「心理士」は自称できても、「心理師」は公認心理師だけに認められている資格名称です。

日本では自称も可能な心理カウンセラーですが、世界的には国家資格として基準が設けられている例が少なくありません。海外の心理カウンセラー事情と足並みをそろえる必要性、また、現在の民間心理カウンセラーが乱立する状況から、制度の整備の必要性が高まり、生まれた資格ともいえます。

実質的な活動内容は、以前からある臨床心理士とその多くの部分で重なっています。養成課程や学歴制限にも大きな差異はなく、現時点で臨床心理士には不足している国内外での公的お墨付きを与えられたものが「公認心理師」といってもいいでしょう。

臨床心理士

「臨床心理士」はその受験資格が、臨床心理学系の修士号を取得するか医師免許取得者かに制限されているほか、専門職大学院などの指定大学院の養成課程と試験、実務訓練を経てはじめて認められます。

心理学における専門職資格としての認知度は最も高く、ほかの心理学カウンセラー資格を取得する際の資格要件とされることもあります。その活動は多岐にわたり、一般的な対人関係といった日常生活から学校・企業内の教育労務関係、司法分野での矯正指導、医療・福祉分野のサポート、学術研究などまでの広い範囲で専門的な知識に基づく援助活動と教育活動、研究活動などを行っています。

「臨床発達心理士」「学校心理士」「ガイダンスカウンセラー」は、いずれも教育分野での心理カウンセリングを担当する専門家としての位置づけです。

◆心理カウンセラーの資格をとる方法

お手軽な方法から説明していきましょう。

通信講座

心理学通信講座

心理カウンセラーについては多くの通信講座が用意されています。働きながら、子育てをしながら、または学校に通いながらでも、空き時間を有効活用することで資格取得に結びつけることができます。

また通信講座の場合、設定価格が低めであること、時間設定が自分次第であること、受講期間の設定が長めであることなど、手軽なだけでなく融通がきく点も人気の秘密といえます。ただ、通信教育には、自己管理能力がないと続けられないという問題もあります。自由が過ぎると集中できないタイプには通学講座のほうが向いているかもしれません。

通学

心理学大学・大学院通学

通学タイプは、心理カウンセラーの資格を授与している機関が運営している学校と、民間に公開されている資格試験に対応した学習が可能な学校とがあります。前者の場合には、認定校、認定コースなどと呼ばれ、通学してコースを修了することが資格の受験資格になったり、修了すれば無試験で即資格を取得できるものもあります。費用的には、通信講座と比較すると割高ですが、情報収集面で有利であるほか、勉強仲間ができて励みになり、教師からのフォローを受けやすいという利点もあります。通学タイプの場合には、自分が狙う心理カウンセラー試験の受験資格を得るための予備校的な使い方をすることが多いようです。

より難易度の高い心理カウンセラー資格を得るためには、大学や大学院で心理学関連の科目を履修して卒業する必要があります。資格が不十分な場合には、あらたに大学入試をするか、編入の形で不足している科目だけを履修するか、いずれにしてもかなりの年数と費用がかかります。

どのようなレベルの心理カウンセラーを目指すかという目標設定が第一ステップですが、同時に、期間と費用、そして受験資格の有無などを照らし合わせ、自分の希望と状況に適した資格と学び方の選択が必要でしょう。

◆心理カウンセラーとして働く方法

さて、心理カウンセラーとしての資格を得ました。ではすぐに就職ができるのか、仕事にいかせるかというと、実は厳しい現実が待っています。

社会で心理カウンセラーの需要はあります。ただし、求人そのものは決して多くありません。それというのも、需要に対するカウンセラーポストの整備がまだ不十分だからです。

学校や企業、病院、公共団体など、多くの場所で心理カウンセラー常駐の必要性こそ叫ばれていますが、実際に配置されている例は多くなく、たとえ配置があってもパートタイムでの勤務が多いのが現実です。経費削減の一番の対象となる人件費、その中でも削られやすいのが、まだ設置していない、または設置して日が浅くその効能がはっきりと現れていないカウンセラーに向けられるのも無理はないのかもしれません。

たとえ、難易度が高いといわれる資格を持っていたとしても、心理カウンセラーとして独り立ちするのはもちろん、フルタイムの正社員として就職することも簡単ではなく、心理カウンセラーとして働いている人の多くは、いくつかのパートタイムの職場をかけもちしているか、ほかのアルバイトや派遣職場などで生活費を稼ぎつつ、心理カウンセラーとしての経験を積んでいるというパターンが多いようです。

そのため、資格をせっかく取得しても、それを活用できる場が自身の生活周囲に限られていたり、心理カウンセラー職に限定しきれない就職活動での履歴書の資格欄を埋めたりといった形でしか活用されないこともあります。

心理カウンセラーを職業として働くことができる人は、資格保持者の数からすると、かなり少数といわざるをえません。

◆今、心理カウンセラーとして働いている人とは

もちろん、今現在フルタイムで心理カウンセラーとして活躍している人もいます。彼らのうちの一部は、大学や大学院で心理学を専門に学んだスペシャリストであり、病院などの医療現場や教育関連機関などに所属し、専門的な治療を行っていることが多いようです。

その他の心理カウンセラーたちは、医師、看護師、介護士、保健婦など、従来から社会の悩みを相談される立場にいて、その中で必要性を感じて心理カウンセラーとしての資格を取得したことをきっかけに、心理カウンセラーへとスライド的に転職していくパターンが少なくありません。同じように、ボランティア活動としての傾聴活動や援助活動を通じて、やはり必要性から心理カウンセラーへと転身した例もあります。

多いとはいえませんが、実際に心理カウンセラーとして独立する人もいれば、職業としてフルタイムで働いている人もいます。さらには、ウェブやマスコミなどを利用して、心理カウンセリングを行う新しい形のカウンセラーも登場しています。

心理カウンセラーの活動は場所を選ばないという特徴があります。そのため、資格を取得した後の働き方に定型がありません。工夫次第では、新しい形のカウンセリングを成立させることができるかもしれません。

◆自分のための心理カウンセラーを見極める方法

最後に、自分が心理カウンセラーに相談をもちかけたいと思っている時に、どうすれば自分に合った心理カウンセラーを見つけられるかという見極め法について考えてみたいと思います。

心理カウンセラーと名乗る中には、さまざまな資格や能力を持つ人が混在していることはわかりました。そこには、能力の差だけでなく、本来あってはならないことですが、カウンセラーとしての心構えにも差が生まれています。そのため、十分にカウンセラーを見極める必要があります。

あなたの求める心理カウンセラーが、あなたの話に耳を傾けてくれる人なのか、心に巣くった病を一緒に治療してくれる人なのか。その求める内容によって、選ぶ心理カウンセラーがかわってきます。気楽な相談の場でいいのか、職場や法律などによって、厳しく守秘義務を課されているカウンセリングルームが必要なのかも選択の際の要因となるでしょう。

自分にあった心理カウンセラーを選ぶにあたって、まずは、あなたが心理カウンセラーに相談する内容、そしてそれに対してどう対応してほしいのかを整理しましょう。心理カウンセラーが持つ資格、所属団体などによって、扱う内容が変わってくるからです。

費用の問題もあります、ボランティアで話を聞いてくれる程度でいいのか、個人経営のカウンセリングスタジオを訪ねるべきなのか、または保険が適用される医療行為としてのカウンセリングを必要とするのかどうかなども判断の一つに加えておきます。

ただ、心理面のカウンセリングを求めている人の状況を考えると、これらの判断や選択が自分では十分にできないことも考えられます。そんな時には、公共団体などの窓口で受けられる相談を経て、より自分にあったカウンセラーを探していくといいかもしれません。

◆まとめ

日本では古来、心のうちを人に見せることを良しとしてきませんでした。つらくとも我慢、耐えることこそが美徳といった考え方が強く根付いていたのです。

ただ、その考え方は、社会がより小さなまとまりであり、人々の心の距離が近く、お互いの思いやりや忖度が身近だった時代だから通用したのです。あらゆることがハイスピードで進み、ゆっくりと人間関係を築く間がなく、人との距離感がつかみにくい現代では難しい理念といえます。

学び方、働き方、生き方が常に問われる現代社会の中で、迷い病む人は多く、心理カウンセラーは多くの場面で必要とされています。人は心の中の問題を吐き出す場所、理解してくれる人を求めるようになりました。

その受け皿になるのが心理カウンセラーです。日本の歴史的な土壌の影響があり、心理カウンセラーという心を扱う職業の社会的な位置づけは世界的な視野から見ると遅れを取って、ようやく今動き出したところです。

人々の心の悩みから人間関係、さらには社会問題までの広い範疇が心理カウンセラーにとって専門分野といえます。より良い生き方につながる傾聴者、またはアドバイザーとしての心理カウンセラーは、今後さらに社会での必要性を高めていくのではないでしょうか。

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